☆ 症例が豊富です

白血病、再生不良性貧血、神経芽細胞腫などの悪性固型腫瘍を中心に、常時30人前後の血液・腫瘍性疾患の患児が入院治療を受けています。とりわけ診断や治療の困難な患者さんが愛知県下のみならず全国から紹介されてきます。造血幹細胞移植の症例数も、2005年は25例、2006年は9月末までに23例に達し、全国の大学附属病院小児科のなかでは12位を争う病院です。移植の種類も自家末梢血幹細胞移植から非血縁者間臍帯血/骨髄移植、血縁者間ハプロ移植まで多岐にわたります。

 
 
☆ 臨床に直結した研究をめざしています

当科ではISO9001, ISO13485を取得したセルプロセッシングセンターを保有しています。現在、悪性腫瘍や移植後合併症に対し、細胞障害性T細胞や骨髄間葉系細胞を用いた細胞療法の実施をめざした研究をおこなっています。また、再生不良性貧血やMDSなどの検体が全国から診断目的で送付されてきており、これらの疾患におけるわが国のセントラルラボの役割を果たしています。ベッドサイドから生まれる疑問の解決、難治性疾患の治療成績の向上をめざした研究に重点をおいています。

 
☆ 最先端医療を実施しています

大学附属病院の使命のひとつに、先端医療の開発、実施があります。一例をあげれば、血縁者間ハプロ移植の開発、移植後合併症に対する分子標的療法(抗TNFα抗体、抗CD25抗体、抗CD20抗体)、免疫抑制療法の不応な再生不良性貧血に対するCD52抗体療法など、他施設ではみられない治療を実践しています。

 
☆ 研究環境が整備されています

小児科血液研究室では、フローサイトメトリー、リアルタイムPCRDNAシーケンサー、マイクロアレイアナライザーなど、免疫・遺伝子関連の研究に必要な機器が備わっています。大学内の動物実験施設やRI施設の利用も可能で、免疫不全マウスを用いた移植実験等もおこなわれています。

 
 
☆ 名古屋は研究会、学会への参加が容易です

名古屋においては、東海4県(愛知、三重、岐阜、静岡)の小児科医を対象に、1年にそれぞれ4回小児血液懇話会、小児骨髄移植懇話会が開催されます。また、小児外科医や病理医を交えた小児がん研究会も年に2回開催しています。幹細胞移植関係では、血液内科医と合同で隔月、名古屋BMTグループの例会も名古屋大学で開催されます。血液・移植関係の厚生省班会議(堀部班、小寺班)や小児再生不良性貧血・MDS研究会、名古屋BMTシンポなどは例年名古屋で開催されます。このほか、血液・移植関係で来日した著明な外国人研究者の講演会も頻回に開催されます。来月(200610月)の講演会の予定を以下に記載します。

104 Graft-vs-Host Disease: Evolving Concepts and Novel Therapies
Richard E. Champlin, M.D.
 
10月12日 WT1ペプチド癌免疫療法
杉山治夫
 
1025 Long-lived CTL Generated Using Artificial Antigen-Presenting Cells:Translational Cancer Research from Bench to Beside
Naoto Hirano, M.D., Ph.D.
 
1028 Mesenchymal Stem Cells: Their Role as Potencial Tumor Stroma and Efficient Gene Delivery Vehicles
Frank C. Marini, Ph.D.

名古屋は交通の便がよく、東京まで1時間30分、大阪まで1時間の距離で、全国学会への参加も容易です。病院から中部国際空港まで40分の距離です。

 
☆ 学会活動が盛んです

20051年間の血液腫瘍関連の英文論文数は22です。また米国血液学会(9演題、うち口演3題)、日本血液学会・臨床血液学会合同総会(13演題、うち口演7題)、日本小児血液学会(9演題、うち口演5題)、日本造血細胞移植学会(5演題、うち口演2題)など、関連する主要学会に多数の演題を発表しています。

 
☆ 国際交流に力を入れています

現在3名の外国人留学生が、血液・腫瘍関係の研究に従事しています。海外からの研究者や交換留学生がいる場合は、英語でケースカンファランスがおこなわれます。イラクからの白血病患児の治療などを通じて、国際社会への貢献をめざしています。

 
☆ 関連施設

関連施設には、造血幹細胞移植の分野で伝統のある名古屋第1赤十字病院(加藤剛二部長)、JPLSG事務局のある国立名古屋機構名古屋医療センター(堀部敬三臨床研究センター長)などがあります。

血液専門医

名古屋大学小児科は、
☆ 血液専門医と学位の同時取得をめざします

血液専門医の取得には、

1)  小児科専門医を取得後、日本血液学会の認定施設で3年間の臨床血液学の研修

2)  日本血液学会の会員歴が3

3)  臨床血液学に関する学会発表・論文が2つ以上

4)  10名の受け持ち入院患者の診療実績記録の提出

が必要です。学位の取得には、3年間の大学院への在籍と2編以上の英文論文(BloodPediatricsなど指定された雑誌であれば、特例として1編でも可)、あるいは4年間の在籍と1編以上の英文論文の提出が必要です。本プログラムでは、最短3年間で血液専門医と学位を同時に取得することが可能です。

 
☆ 診療は当番制を採用しています

主治医制をとらず、入院患者はスタッフ全員で受け持ちます。教官、医員/社会人大学院生、フレッシュ小児科医(卒後45年で、大学病院で各専門分野をローテート研修中の小児科医)、ローテート初期研修医が1チームを構成します。月曜日は小島教授以下全員が、火・水はAチーム、木・金はBチームが対応します。また、土・日は当番医が担当となります。当番制を採用することで、各自が経験する症例数を増やすことが可能です。例をあげれば、3年間に経験する幹細胞移植例数は7080例にも達します。また、非番の2日間を研究日にあてることが可能です。外来の業務はありません。また、実験手技の取得期間として臨床業務からはずれ、研究に専念する期間が6ヶ月間認められています。

 
 
☆ 入局は義務づけられていません
このプログラムは、全国の血液専門医をめざす小児科医に提供されています。他大学医局に入局中、あるいは非入局の医師でも自由に応募が可能です。血液専門医をめざす小児科医がこのプログラムを利用し、さらにキャリアアップすることを望んでいます。
 
☆ 細胞形態学を重視しています

毎週、血液標本カンファランスでは、小島教授を囲んで、全員ですべての骨髄標本を鏡見します。小児再生不良性貧血およびMDS研究会のセントラルレビューを担当していることから、全国から送付されてくる血液標本を鏡見する機会もあります。また、全国的に数少ない血液病理専門医である名古屋第1赤十字病院伊藤雅文先生(小児MDS研究会病理担当)や名古屋大学医学部附属病院中村栄男先生(JPLSG、リンパ腫担当)と密なコンタクトがあります。

 
 
☆ 抄読会、症例検討会が多数あります

3つの抄読会(臨床、基礎研究、総説)、ケースカンファランス、小児外科や親とこどもの診療部とのケースカンファランス、研究ミーティングが毎週おこなわれています。その他、関連施設である名古屋第1赤十字病院小児医療センター血液・腫瘍グループとの合同ケースカンファランス、名古屋大学血液内科との合同移植カンファランスもおこなわれます。

☆ 勤務条件

名古屋大学医学部附属病院非常勤医員/社会人大学院生

月収入 60万円(非常勤医員手当+代務料)

代務は土日の当直、月3回程度を予定

 
☆ 選考方法

20071月中旬におこなわれる名古屋大学大学院医学系研究科博士過程選考試験に合格することが必要です。大学院入学試験の願書締め切りは200612月末です。

 
☆ 募集人員

若干名

 
☆ 応募条件

小児科専門医を取得。ただし、短期(12年間)の研修を希望する場合には、小児科専門医取得前でも可能です。この場合は、大学院には入学できません。

 
☆ 連絡先

本プログラムに興味をもたれましたら、谷ヶ崎博yagasaki@med.nagoya-u.ac.jp)あるいは小島勢二kojimas@med.nagoya-u.ac.jp)まで御連絡下さい。また随時、病棟+研究室の見学も歓迎します。
TEL: 052-744-2294   FAX: 052-744-2974

 
☆ その他

専門医や学位の取得には、最低3年間必要ですが、当科で短期(12年)の研修を希望する場合も相談に応じます。

週 間 予 定
  8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00
  病棟回診・処置 A+Bグループ                  
抄読会  (臨床系) 病棟回診・処置 Aグループ         血液グループケースカンファランス(CC) 小児外科とのCC ラボミーティング  
抄読会  (基礎系) 病棟回診・処置 Aグループ                  
抄読会  (総説) 病棟回診・処置 Bグループ 鏡見CC   病棟新患CC 教授回診 医局抄読会/  症例検討会        
小児精神科とのCC 病棟回診・処置 Bグループ                  
    当番医の回診・処置                   
    当番医の回診・処置                  
スタッフ紹介

小島 勢二       教授

1976年に名古屋大学医学部卒業、静岡県立こども病院、名古屋第1赤十字病院で小児血液病患児の診療に従事。1999年名古屋大学成長発達医学/小児科教授、再生不良性貧血、MDS、造血幹細胞移植が専門

 

高橋 義行       助手

1992年に名古屋大学医学部卒業、名古屋第1赤十字病院で研修。
名古屋大学小児科大学院、米国NIHを経て2006年から現職。三重大学・珠玖教授、NIHChild博士のもとで腫瘍免疫を研究。小児固型腫瘍、造血幹細胞移植が専門

 

谷ヶ崎 博        助手

1995年に信州大学医学部卒業、名古屋第1赤十字病院で研修。
東京大学医科学研究所大学院を経て2005年から現職。
東京大学医科学研究所・山下孝之博士のもとでファンコニー貧血の遺伝子研究、小児造血不全、造血幹細胞移植が専門

 

吉見 礼美 (造血細胞移植寄附講座 助手)

1994年に福井医科大学卒業、名古屋第1赤十字病院で研修。
名古屋大学小児科大学院、ドイツフライブルグ大学を経て2006年から現職。フライブルグ大学Niemyer教授のもとで小児MDSの研究、ヨーロッパ小児MDSグループのセントラルレビューを担当。帰国後、日本小児MDS研究会のセントラルレビューを担当。

 
 
☆ 研修中の声

Hさん

私は自治医科大学出身で、卒後9年間は各科のローテート研修の他、過疎地で老人医療も含め地域医療に従事してきました。しかし、学生時代に抱いた血液学への興味も捨てきれず、昨年の4月から非常勤医員として小児血液病の患者さんの診療に従事しています。昨年1年間に50人以上の白血病、再生不良性貧血、固型腫瘍など患者さんの診療に携わり、造血幹細胞移植も25例経験しました。チーム医療の一員として、小島教授を始め教官の指導を受けると同時に、小児科ローテーターや研修医を指導する立場でもあります。
学会活動も、昨年1年間に日本小児科学会、日本血液学会/臨床血液学会、日本小児血液学会、米国血液学会、日本造血細胞移植学会と、血液関係の主要な学会にはすべて演題を提出しました。とりわけ、小島教授の勧めで、名大小児科および関連病院で治療した小児急性巨核芽球性白血病(AMKL)の臨床統計をおこないましたが、47例のAMKLが集まりました。あのSt.Jude病院からのBloodの報告でさえ41例です。あらためて、症例の豊富さを実感しました。このような臨床研究を通じて、まだ研究を必要とする分野がたくさんあることに気づき、自分の手で遺伝子解析などの病態研究をおこないたいという思いが募ってきました。このような背景から、この4月から開設された血液専門医と学位を同時に取得できる本プログラムを選択しました。まずは、半年間の診療フリーの期間を利用して、研究に必要な技術を身につけたいと考えています。

Nさん

私はSこども病院で3年間血液腫瘍疾患の診療経験を積んだ後に、この4月から母校である名古屋大学の社会人大学院に入学しました。こども病院では、造血幹細胞移植を含め貴重な診療経験を得ることができたのですが、血液専門医として免疫学や分子生物学の基礎的知識が必要と感じたことや、海外留学の希望もあったことから、本プログラムを選択しました。大学病院とこども病院の違いは多々ありますが、思いついたことを23あげてみます。
大学病院の“病棟が思ったより働きやすい”は意外でした。大学病院の看護師さんは、一般病院の看護師さんと比較して官僚的だと、どこでも医師サイドからは不評ですが、こと名大病院小児科病棟の看護師さん達は献身的で、医師にも協力的なのには驚きました。研究室が臨床に直結した研究をおこなっているので、診療に必要な情報をリアルタイムで知ることができます。以前の病院では、保険の関係から、移植後のウイルス感染症などの検査も充分できませんでしたが、自分達でおこなっているのでウイルス抗原量、テトラマー法によるウイルス特異的CTLなどの結果にもとづいて治療方針を決定することができます。増幅したウイルス特異的CTLを治療に用いるプロジェクトも実施間近です。また、各血球系統の生着などについても、フローサイトメトリーでその日のうちに知ることができます。研究が直ちに診療に役立つことを実感しています。また、大学病院ならではの先端医療も経験することができました。これまでは、ステロイド抵抗性のGVHDにはそれ以上の治療手段がなくお手上げでしたが、ここではサイトカインの発現パターンにもとづいて抗TNFαやCD25抗体が投与されています。近々、間葉系幹細胞も治療抵抗性のGVHDに使用される予定です。
まだ研修を開始して5カ月ですが、臨床経験を積むとともに学位取得をめざして、研究テーマを早く決定したいと思っています。